ちょっと間延びした週末の話

 岡山の桜はまだ咲かない。花見もできないので、特に予定のない週末だった。
 土曜日は午前中に買い物に出た。ポルガが遠足などの行事のときに使うリュックサックを買うためで、最初に車で15分くらいのお店に行ったがいい物がなく、そこからさらに20分くらい掛かるショッピングモールでようやく出会った。ターコイズブルーに赤と白の入った、好きな感じの色合いのもので、普通に大人用である。ジュニア用のリュックは、ギャルっぽいものか、そうでなければダサいものしかなく、まるで買う気が起きなかった。ポルガは希望として「ポケットが多いもの」ということしか言わず、その条件に適うだけの、形も色もひどいだろそれは、みたいなものを「これにする」と手に取るので、お前はマジか、と思った。ポルガってどうやらそういう子らしい。ただしその条件を満たしさえすれば、ひとつのものに固執もしないので、こっちにしときなさい、と別の物に差し替えるのが容易であり、それは助かる。要するに男子っぽい。ピイガはこうはいかないだろうな。ランドセルもピイガはきっとピンクなんだろうな、と早くも観念している。
 予定よりも遠出になったので、帰宅が昼よりもだいぶ遅くなり、お店で弁当類を買って帰った。僕はかつ丼。そしてビール。スーパーの、出来合いの、ご飯に汁が滲みたかつ丼って、やけにおいしい。上級の鰻重の美点として、「鰻とご飯が一体となり両者の区別が判然としない状態」というのがあるらしいが、スーパーのかつ丼ってある意味でその域に達しているような気がする。
 午後はファルマンが副鼻腔炎の診療でひとり耳鼻科へと出掛けたため、僕も子どもとともに散歩に出る。近所の桜並木を歩いた。つぼみの尖端が小さく開いてはいるけれど開花ではない、という段階。春の陽気が気持ちよかった。帰宅して昼寝。昼にビールを飲んで、そのあと散歩をして、寝ないはずがあろうか。幸福感に包まれながら1時間あまり寝る。
 晩ごはんはミートソーススパゲティ。レトルトのものに、肉やきのこなど少しだけ加えた、手抜きメニュー。昼のかつ丼がわりといつまでも腹の中に残り、きちんとしたごはんを食べる気が起きなかった。それは昼の弁当にかつ丼を選んだ僕個人の事情だったが、家庭の食事のメニューというのは往々にして作り手の個人的な事情によって差配されるのである。
 明けて今日は、午前中に僕だけ図書館に行き、その帰りに買い物など、こまごまと用事を済ます。昼ごはんは最近の定番の焼きそば。そしてビール。なんかここへ来てビールがやけにおいしい。周期的にやってくる、ビールやけにおいしい期に入っている。
 午後は昨日と同じく子どもたちと散歩に出た。今日はきちんとバトンを担ぎ、公園まで出た。公園は普段ほとんどよその人とかち合ったことがない場所だったのだが、さすがにこの季節の日曜日の午後ともなるとそれなりに他の家族がいて、そばに我が子がいるとは言え、バトンを回すのが少し躊躇われた。いくら子どもを連れているからと言って、キャスケットにサングラスの父親がいきなり手製の布袋からバトンを取り出して廻し始めたら、僕だったらちょっと身構えると思う。おや、と思うと思う。でもせっかく担いできたので、子どもたちと追いかけっこをしつつ、手ではクルクルとバトンを廻した。カムフラージュのために「子どもたちと遊びつつ」という形を取ったわけだが、余計に異様になったかもしれない。
 帰宅して昼寝。昼にビールを飲んで、そのあと散歩してバトンを廻して、寝ないはずがあろうか。幸福感に包まれながら、2時間あまりも寝る。
 晩ごはんは、鯵の開きと、煮物と、味噌汁。実は明日に勤め先で健康診断があるため、いまさらなんの意味があるのかという感じだが、今晩だけはアルコールを控えることにし、そのために、酒をそんなに飲みたくならない献立にしたのだった。どこまでも作り手の個人的な事情。
 ちなみに明日は健康診断なんかをしつつ、勤務を終えて帰宅したら、家には誰もいない予定となっている。明日、ポルガが修了式で、そのあと3人は島根へ、春休み恒例の1週間ほどの帰省へと出発するのである。なんで修了式が明日やねん、金曜でよかったやん、金曜日に終わってたらこの週末に車で島根に行って僕も1泊だけして帰ってくるいつものパターンができたやん、という話なのだが、嫌がらせのように修了式は明日なのである。だから今回は公共交通機関で移動することになった。しかも来週の僕は土曜日が休みではないため、今回は本当に僕は島根へ顔を出せない。まったくもって残念な日程なのだった。