飛び出せスプリング

 3月だ! 最高気温15度あたりだ! ということで公園に繰り出す。こちとらガツガツしているのだ。
 行ったことのない公園に行く。山の上にある公園。「山の上にある公園」というものが、車で20分圏内くらいに、わりと複数箇所ある。こういう公園って、公園およびそのそばの駐車スペースに辿り着くまでに、「ほ、本当にここを車で登るの? た、対向車が来たらどうするの?」という道を走る必要があり、島根で初めてその洗礼を受けたときは恐怖のあまり引き付けを起しそうになったが、それも経験を重ねて少し慣れた。とは言え今日のところもなかなかだった。
 そうして苦労してたどり着いた公園は、その億劫さゆえか基本的に閑散としていて、遊びやすい。ここでいう「遊びやすい」は、本当にほぼ貸し切り状態のことを指していて、こちらで「賑わっている」レベルの公園であっても、都会の子からすれば「今日は空いてる」くらいの感じだろうと思う。そんなわけでほぼ貸し切りの公園で、思うままに遊んだ。遊具はそれほどでもなかったが、風光明媚で、木のトンネルのようになっている道があったりして、3月上旬の軽やかな時候に、ちょっとしたピクニックのごとく愉しめる、いい公園だった。子どもたちも鬱憤が溜まっていたようで、公園に行くと言ったら、ボールやらシャボン玉やらフリスビーやらバドミントンやら、なんかいろいろ持ってきていた。かく言う僕もバトンを背負っていき、回した。家族の、僕がバトンを回してもなんの反応もしなさ、もはやちょっとシュールでおもしろい。一家の父が、平均台みたいな遊具を渡りながら、トワリングバトンをクルクル回してんだよ! めっちゃおもしろいじゃん! なんで無視なの! と思った。広い面積の公園の途中に、グラウンドのような場所があり、もちろんここも貸し切りだったので、走ることにした。見慣れない文字がこの日記に現れた。でも間違いじゃない。走ったのだ。先日とうとうランニングシューズを購入し、今日はそれを履いてきていたため、気持ちが乗っていた。グラウンドの端の柵を指さし、「あそこに行って柵にタッチして帰ってくる競争をしよう」と家長として提案し、自分の走る意欲の高まりに家族を巻き込んだ。そして走った。柵までは5、60メートルくらいだったろうか。もちろん勝った。それは勝つだろ、と思っていたら、ファルマンはだいぶ悔しがっていた。「全盛期なら絶対に負けなかった。やっぱり子どもを産んだからだ」などとブツブツ言っていた。僕は純粋に勝利に気を良くした。久しぶりに全速力で走った爽快感もあった。走り終え、ベンチに座り、そして再び立ち上がったときの腿の違和感には驚いたが、それでも気分は良かった。それから東屋で、買ってきたおにぎりを食べ(メインの昼食というわけではないが、公園でおにぎりを食べる、という行為をしたかったのだ)、公園をあとにした。とても愉しかった。
 そのあとはスーパーに立ち寄り、財布の中身が潤沢な月初のテンションでまとめ買いをする。ほうれん草やネギ、ニラらへんの値段が落ち着いた。キャベツと大根がいまだ高い。店先のプレハブのような店で売っていたたこ焼きを買って帰る。
 帰宅して、たこ焼きや、簡単に作った焼き飯などで、改めて昼食とする。ハイボールを飲む。春先の運動後のたこ焼きハイボール。格別にうまく、クラクラするほどだった。そのあと、当然中の当然の帰結として、昼寝。運動してハイボール飲んで寝ないはずがない。昼寝はいい。メロメロする。
 夕方に起きて、夕飯の準備。夕飯は桃の節句ということでちらしずし。もちろん即席の具入りのものを使って作るのであり、とても簡単。上にサーモンや甘エビなどを醤油漬けにしたものを散らした。味はもちろんおいしい。サーモンも甘エビも、具の蓮根や椎茸もおいしいが、ファルマンと夫婦で口を揃えて言うことに、「酢飯がおいしい」。酢飯がおいしいということは、要するに酢がおいしいのである。酢うまい。本当に酢のおかげで咀嚼がはかどる。酢ありがたい。